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 しんしんと雪が降り積もる。
 道場のほうからは竹刀で打ち合う音や稽古の音がかすかに聞こえるが、今日は私は休みだ。

 ここにきて一週間はとっくに過ぎた。年も明けてしまった。
 撃剣師範を任じられ、隊士たちに指導したり、あるいは決闘を申し込まれたり。たまに幹部の人から雑用を頼まれたり、時折近藤さんがふらりと現れ、三鷹葵について思い出すことはないかと尋ねられたり。近藤さんの、収穫がなかったときのあの顔を思い出すと何故かこちらが申し訳なくなるが、苦虫を噛み潰すような心持ちにもなる。――思い出すわけがない。思い出す記憶すらも持っていないのだ。何かを期待するほうが悪い。

 加えて溜息と吐かせる要因になっているのは、沖田さんだ。松原さんと話した、否、初めてここに来たときから、彼とは会っていない。視界には入る。同じ空間で食事もする。けれど会話をすることはなかった。席が遠いということもあるし、何より何を話せばいいのか思いつかない。
 ――土方さんが悪いのだ。沖田さんの剣と私の剣が似ている、なんて言うから。

「深山」

 噂をすればなんとやら。いや、独り言だったけれど。
 ああほんとうに、みればみるほど、

「こんにちは」
「はい、こんにちは。今、ちょっといいかな?」

 あなたは、兄に似ている。