時は恐らく12時は回ったころだろう。
 幹部が集まる広間では、すっかり酔っ払いたちが出来上がっていた。

「オラ、葵!酌しろ!酌!」
「永倉さん慣れなれしいっすね!」
「うるせえよ!」
「土方さん土方さん、ちょっと一発殺り合いましょうよ」
「局中法度を知らんとは言わせねぇぞ」
「幹部が率先して破ってんじゃねえよ、沖田さんに介錯してもらってこい!」

 殺伐とした会話だが、当の本人達はげらげらと片手に杯を持ち床に転がっている。本当に彼らは幹部なのだろうか。息抜きは時には必要、というのも分かる。お酒のおいしさはいまいち理解できないが、アルコールに浸りたい場合もあるのは知っている。
 しかし彼らはどうだ。本能のままにアルコールを摂取して、出来上がったのは恥も外聞も威厳もない大の大人たち。

「…ばかなの?」

 話は数時間前に遡る。
 私の存在は、大々的ではないが、幹部たちには三鷹葵の手がかりと、平隊士たちにはさる有名道場の門弟であり師範に抜擢され新撰組へ来た、と告げられた。新撰組の名簿には壬生浪組結成以来、初の女性撃剣師範として名を連ねることとなった。
 そして、その日の夜、幹部たちを中心にささやかながら、私の歓迎会と称した宴会が開かれた。

 本当に、称されただけだ。