近藤さんの言うとおり、未来から来た私には、身寄りを寄せる所どころか、京都の街すら分からない。暮らしも通貨も違うこの時代は、確かに日本だけれど、私が生きていた時代の日本の、前の姿であるとは思えなかった。
未発達の文明。それなりに、知恵と工夫を凝らしているようにも見えるけれど、電子化された時代からしたら、江戸時代すら原始時代だ。
そんな時代で、一人で生きられると思えるほど、私は強くない。
誰かと重ねられることが、こんなに腹立たしいこととは思わなかった。
何も出来ないくせに、プライドだけは人一倍ある。
今さら、沖田さんと出会ったとき、帰る場所がない、なんて口走ったことを後悔している。
帰る場所もない、みじめな人間になんて思われたくなかった。
私は、そういう人間だ。
でも、この時代はそんな私のつまらないプライドも折らざるを得ないほど、私を不安にさせる。
利用できるものは利用しよう。自分を守るために、なんてくだらない算段を立てながら。
「歳、総司もいいだろう?」
「局長が決めたことなら」
「ありがとう。…深山くん、どうかね?」
「…分かりました」
見栄だけのプライドがあることを、自覚しているだけ、きっと私はマシな人間だ。
「――しばらく、お世話になります」
自覚している分、ある程度、捨てる事だって、できるのだ。
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