「深山くん。私達は松平公には大恩がある。松平公が三鷹の姫を探しているのなら、私達も手を尽くしたい。君が、彼女の手がかりになるかもしれないんだ」
松平、という人に対しての恩を痛切に感じさせる近藤さんの物言いに、思わず目を逸らしたくなる。
そして、次の言葉には、もう閉口するしかなかった。
「暫く、新撰組に滞在してはくれないか?」
今のところ身寄りも、無いのだろう?と私を気遣うように言う。
どうしたら、そんな発想になるのだろう。
いや、違う。
言い方に、違和感があるのだ。
彼らなら、私を無理やりこの場に留めておくこともできるのに、伺いたてるように、尋ねている。
近藤さんの生来の性格が温厚なのか、それとも算段した上での言葉なのか。
きっと、前者だと思う。
ひねくれた私には、その言葉は真っ直ぐ受け取れない。
けれど、近藤さんの提案は、妙案と思えた。