歴史上には名の上がらない、東西南北と京を囲むようにして在る四つの家。
 三鷹、鷲頭、造隼、梟雄。
 その中の一つ、三鷹家には大層美しい娘がいた。12にもなれば、あちらこちらから縁談の舞い込むほど。器量もよく武芸にも優れた娘だった。

 三鷹家は、三人の兄と、その娘の四人兄弟だった。
 少し歳の離れた妹を、三人の兄、特に一番上の兄は特に可愛がっていた。

 10の頃から舞い込み始めた縁談は、12になれば両手から溢れるほど。
 しかし娘は13になっても、14になっても、縁談に首を縦に振らなかった。

 なぜなら、一番上の兄と恋仲になっていたから。
 珍しい話ではない。
 しかし、互いが互いを愛しすぎていたのだ。

 ある時、三鷹家でさえ断れない有力貴族からの縁談がきた。
 当然、三鷹家の当主は娘に、嫁に行くように伝えた。

 今度も娘は首を縦に振らなかった。
 怒った当主は反省しろ、と娘を納屋に閉じ込めた。
 その夜、こっそり一番上の兄が、娘の様子を見に納屋に忍び込んだ。

 しかし、一番上の兄が、父に掛け合い縁談を反故すると言ったが、娘はこれ以上家の者に迷惑はかけまい。恩を返すことにすると、兄の申し出を断った。

 兄は悲観にくれた。
 どうしてだ、と。
 あれほど、愛し合っていたじゃないかと。

 そして娘を殺して、自分も共に死のうとした。
 兄は、もう狂っていた。

 けれど、娘のほうが、手遅れだったらしい。

 兄を刺して、自分の髪を切り、兄の傍らに添えた。

 そして、そのまま、娘は行方をくらませた。