「能面みてぇに表情も変えないで、かと思えばいきなり激昂して泣き出す。手に負えねぇよ」
「女なんて、そんなもんだよ」
「総司、歳!いい加減にしろ」
「…お二人の言うとおりですよ、局長さん。女なんて、自分の都合しか考えていませんから」
「…深山くん?」

 居心地は悪くないと思えたけれど、やっぱり私が居ては、いけないらしい。
 まあ、それもそうだ。自分でも何をしているんだか、よく分からない。

 たまたまこの時代に飛ばされて、ここに辿り着いただけ。
 辿り着かれた側からしたら、迷惑この上ない。

「手に負わなくて結構です。もう出て行きますから」
「深山くん。そうじゃなくてだな、」
「はっきり言ったらどうですか?まだ何かしらの嫌疑が私に掛かっているのでしょう?」

 私の言葉に、近藤さんは言葉を詰まらせた。
 わかりやすい人。局長で大丈夫なの、なんて言いたくなってしまう。

「…何でそう思うんだ?」

 土方さんが、私の態度を訝り、探るように問う。

「間者と間違えたのなら、さっさと外に放り出せばいいでしょう。なのに連れ戻した挙句、組織の上の人間が、部屋にまでやってくる。疑いはないと言いながら、貴方と、沖田さんが傍らの刀の柄から手を放さないのは何故ですか?疑いを持つには十分な要素ですよ」
「へえ、頭は切れるみてぇだな」
「こんなの子供でも分かります。一度こちらの立場になってみては?」
「お断りだな」

 土方さんは、愉快そうに唇の端を吊り上げた。
 一度、自分の状況を考えてしまえば、頭が冷えるのは速い。

「まだ理由を言いましょうか?」
「いや…騙すようですまなかった」

 近藤さんはやや苦々しい表情で溜息をつく。

「…三年前、私達がまだ江戸に居た頃の話だ。」