「いくつか質問するね」

 男はさらに強く、喉に日本刀の切っ先を突きつける。男の目は拒否権は無いぞ、と脅しかけているようだった。
 薄皮がぴり、と痛む。

「…っ、」
「あの血痕は?」
「それ、は」
「言えない?なら次。あの刃物は?見たことの無い形だったようだから、異国のものかな?」

 制服、正確にはカーディガンのポケットにいれっぱなしだった、血のついたカッターナイフ。

 兄を刺した、カッターナイフ。

「答えたほうが、楽だけど?」

 あなたには、関係がないことだ、と叫びたかった。
 けれど、口は閉口するばかり。

 刀が怖いわけではない。
 刀を向ける男が、兄と、重なる。

 無意識に、布団の敷布を手が白くなるほど、握りしめる。
 痛みなんて、感じられないほどに。

「…昨夜、屯所近くで隊士が一人、何者かに襲われた。過激派の攘夷志士によるものと考えているけれど、君が居たからね」
「ちが、」
「違う?なら、なんであんな遅くに、屯所の前に?」
「知りま、せん。そもそも、私、死んだはずなの、に」