「面白い話、ありがとうございました。気分も良くなったので、帰りますね」
「そう?」
「…ああ、私の服は」

 そういえば、と今着ている、真っ白な着物を見下ろす。確か、倒れる前は制服を着ていた。雨に濡れていたから着替えさせたのか。

「…着替えもありがとうございます」
「ああ。着替えさせたのは八木邸の女将さんだから安心して」
「そうですか。服は何処に、」
「その前に、」

 男は何か話始める前に、やたら胡散臭い笑顔を作るのがどうやら癖のようだ。
 嫌な予感しかしない。

 気付けば男の右手は後ろに回っていた。
 男の後ろから、しゃん、と金属が僅かに擦れる音。

 身構えても、もう遅かった。

 人生で、三度目だ。

 喉に突きつけられる、金属の感触。

「君の着ていた着物に、大量の血痕と刃物が入っていたのは何かな?」

 今度は、意識跳ばさないでね、と男は優しい笑みを浮かべた。