高いところから見る街は、とても綺麗なものに見えた。中身は汚いのに。


 もう涙も枯れた。
 心がどれだけ悲しみを叫んでも、一滴も目から溢れやしない。

 泣きすぎたせいで、視界がかすむ。それに目も痛いし、喉も渇いた。

 追い討ちをかけるように、雨が降り始める。

「もう、いやだ…」

 今すぐここから消えてしまいたかった。この場から、むしろこの世界から。

 消えたい、と一度思えば、恐怖が自然と消え失せた。
 もつれる足を動かして、役目を果たしていない錆びたフェンスを乗り越える。

 下から吹き上げる風は、随分と生ぬるい。
 人肌に触れているような嫌悪感に肌が粟立つ。



「ばいばい」

 嘘つきなお母さん、裏切ったお父さん、最低なお兄ちゃん、酷い友人。

 そして私をころしたこの世界。