もう少し、この状況を詳しく言ってみようか。
今朝ちょっと早起きして念入りにブローを施した私の髪が、現在、私よりはるかに長い指の、それも僅かに膨らむ第二関節に絡まって、思い思いの方向にはねることでその存在を主張している。
その程度なら、別にさして動揺するつもりはなかった。
笑って、“やめてよ”なんて言いつつ、彼が飽きるのを待てばいいのだ。
ただ、こうするにはひとつ、大きな問題があった。
腰まであった髪の毛が一気に肩につくかつかないか程度に短くなったせいで、ただ髪を引っ掴まれていてもその距離感がまるで違うのだ。
──手が、近い。
それが原因で、私は柄にもなく、背中にひやりと冷たい汗をかきながら焦っているのである。
全然気にしていないフリを必死で装っているけれど、内心心臓バクバクで、一刻でも早く彼がこの何の意味があるのかないのか全然わからない、意味不明かつ理解不能な行動に飽きてくれることを祈っている。
哀しいかな、なぜか呼吸の量も調節してしまっていて、そんな私を彼は楽しむように涼やかな瞳で眺めていた。