必死にセルフトークを繰り広げ、無我の境地に踏み込もうとする私。
あ、あと一歩で私も悟りを開ける──!
そう思ったその刹那、たったの一言で私を現実に引き戻してくれるありがたーいお言葉。
「ざーんねん。
てっきり緊張して失敗すると思ってたんだけどなあー」
…しまった。
正確には一言じゃなくて二言だったな。いや、この際一言も二言も、それこそ三言だって同じだろう。そんなに変わらない。変わりやしない。
──そんなのどうでもいいから話を戻そうか。
直接耳元に、ダイレクトにきたそれ(にっくいことに掠れたウイスパー? ボイスだ)に、私はあやうくまな板の上に置き去りにした包丁を落としそうになった。
あ、あぶない。
こんな事態にスプラッタとか、まじ勘弁してくれ。血とかみたくないし。なにより痛いからね、私が。