瞬く間に雨が降る直前の鉛空よろしく、どんよりと曇り出す私の表情。
ゴゴゴゴ…という重い効果音とともに、後ろにドロドロと、たくさんの仰々しい黒いモヤを背負ってやりたい。そんな気分だ。
いや、それだけじゃ足りない。
このムカつきを発散するには……もう少し強力ななにかが欲しいな。だがしかしそれがなにかがわからない。まあいいや。それはそれだ。今はこれだ。
さすがにいくらマイペースを地で行く彼でも、もんもんと黒いオーラを発する私の変化には気づくことができたのか(じゃないと困るんだけど)、彼は。
「なーに怒ってんの、やだなあ褒めてんだって!」
それまでの鳩が豆鉄砲をくらったような間抜け面をサッと引っ込めると、「ね?」思わず笑っちゃうくらい真面目なキリッとした顔をする。
かと思えば。
私の顔を見て、へにゃっとした腑抜け面で笑った。
「だって、お前俺ん家で料理すんの今日が初めてじゃん」