第一、あたしの顔を見て喜ぶなんて、この男も大概おかしいのだ。
だって、こんなちんちくりんの顔見るよりかは、少なくとも彼の場合、鏡に写る己の顔を眺めたほうがはるかに建設的なのだから。
天から与えられた凶器まがいの強烈な美貌。
それが原因であたしの憂いを招くのならば、こんなもの要らないのですと一蹴してみせた日の彼はまだ記憶に新しい。
その言葉どおり、ひとたびあたしが彼の眩い美貌が鬱陶しいと告げれば、すぐさまこの男はそのかんばせを刃物でギタギタにしてしまいそうだ。
こうすれば許していただけますか、と。
それくらいの行動力が彼にはあるし、それほど彼に慕われているという自覚が、あたしには、ある。