痛いくらいに胸に響くその声が聞きたくなくて、両耳を塞いでしまいたい。けれど私の左手は彼の右手のなかで、それが実現しそうにない。


ゆっくりと閉じた瞼から、こらえきれなかった涙が頬を伝う。


ほろほろと流れるそれを、彼はざらついた舌でペロリと舐めとっていく。

抵抗する気力は、私に残されていなかった。



「なあ、あんな奴より、俺を選べよ。

…お前が、すきなんだ」



きつく閉じた瞼に、子猫が甘えるように擦り寄る唇。

見た目からは想像できないリアルな熱は、遠慮がちに、私に触れる。