しっとりとたおやかな音をのせる唇そのものが、人を惹きつけてやまない。何かの引力をもっているようだった。自然と、私の視線はそこに吸い寄せられて、そこから逸らすことができない。
「ほら、早く」
長い指がトントン、と机の上を踊る。
それをぼんやりと眺めながら、いちいち綺麗なパーツを持っているひとだなあと考える。
精巧かつ官能的なそこからツ…と目線を上げれば、“どうした?”とばかりに小首をかしげてくる。
ふっと細められた双眼が、思った以上に甘やかで、おのずと漂う怪しい雰囲気に、所謂恋愛偏差値ゼロの私は居た堪れない。
なんだってそんな砂糖に砂糖をぶっかけたみたいな目線を寄越すんだ。