いつもと同じ帰り道
俊は暢気に加藤の話を続けている
交差点の信号待ち
いつも通り素通りをするこの信号で
少し違う感覚があった
俊が足を止めたからだ
ただ一点を見つめて
呆然としているように思えた
ちらりと視線の先を追ってみると
殺風景な裏路地の
それまた見にくい物陰から
ひとり女が見えたり隠れたり
どう考えても
誰かが引っ張ってああなってる
ひどいやつらもいるもんだ、と
俊がぽつりといった
信号が何度目かの青になる
人のざわめきがまた動き出したとき
同時に彼女の姿も見えなくなった
ちっ、と軽く舌打ちをした
あーも
めんどくさ