「あのー………」


頭を抱えていたままの俺は、突然聞こえた声に
慌てて姿勢を正す。

見ると、温まったのか
頬を火照らせた彼女がさっきとは違う表情で立っていた。


「お風呂、………ありがとうございました。」

少し照れたように笑うその顔は、
夕方の笑顔と同じものだった。


そのまま部屋に座らせると、彼女はゆっくりと口を開いた。


「家から………逃げて来ちゃったんです。」

「―――親と喧嘩でもした?」

そう聞くと、彼女は悲しそうに首を振った。