店員の姿が見えなくなるまで目でおう。


びっくりすぎて、声が出ない。

「うそ…奏が…ここに…いるの…?」

目頭に涙が溜まりだす。

コンサートやテレビでしか会えないと思ってた。
君が同じ店にいるなんて…

「奇跡だ…。」

涙が落ちるとほぼ同時に頬を叩く。

「!?」

瑠夏が目を見開く。

「イタッ…夢…じゃ、ないよね?」

瑠夏が笑顔で頷く。

「うん。夢じゃないよ。」
「嬉しい…」

自然と笑顔が漏れる。

「わかったわかった。」

瑠夏が頭をポンポンと叩く。

「でも、食べようねー?さめちゃうよ」

瑠夏がスープパスタを食べ始める。

「う、うん。」

私もフォークを持ち、パスタを巻く。

でも、自然と目線は人だかりの方に行ってしまう。


「……。」

奏がここに…?

「菜桜ー?」

瑠夏が目の前で手をひらひらする。

「へ?」

抜けた返事をした。

「気になる?」

瑠夏がアイスココアを飲みながら聞いてきた。

多分、奏のことだろう。

「うん。でも…あの人だかりに入る勇気ないや…あと…行ったら…奏の邪魔になっちゃう…から…」

ほんとは…
見に行きたい…な。

でも…


「まぁ、早く食べて!」

俯きかけていた私に瑠夏が言う。

残り少しのパスタにフォークを伸ばす。


「みたいんでしょ?じゃあ、早く食べて少しみて帰ろ?」

瑠夏が笑顔でいった。

「ありがとう♪」

嬉しさで全身が熱くなった。

「どういたしまして♪」