「詩織!」

出てきたのは、偉そうなオーラが漂ってるおじさんだった。

私の節穴の目でも、仕立てが良いと分かるスーツを着ている。

竹内さんは、そのおじさんをにらむ。

こ、怖っ。

「帰るぞ」

おじさんが、そう言った。

え、帰る?ってことは・・・

この人、竹内さんのお父さん?

「嫌!」

竹内さんは走り出したけれど、電柱の陰からサングラスの男たちが飛び出してきて、あっという間に取り押さえられてしまった。これが、詩織が言ってた刺客?

「詩織!お前は私の後を継いで社長になるんだ!」

「嫌!私はEXILEになるの!」

朝の静かな住宅街で突然始まった、逃亡劇なのかただの親子喧嘩なのかよく分からない騒ぎに、私はどうしたらよいかよく分からない。

「富士見の竹内って、もしかして・・・」

お父さんがつぶやいた。

「あの竹内ホールディングの、社長の竹内さん?!」