「ありがとうございました」

朝、玄関で竹内さんが深々と頭を下げる。

お父さんが駅まで送ると言ったけれど、竹内さんはここでいいと決して譲らなかったのだ。

「あの、お礼になるかどうか分かりませんが。ちょっと踊ってもいいですか」

「まじすかピョンピョン!!」

見てみたかったんだ、竹内さんのダンス!

竹内さんは家の前の道路に出る。

家の前の道路は住宅街の路地であまり往来はないから、格好のステージに早代わり。

竹内さんは、道路の真ん中に立つと、突然スイッチが入ったように踊りだした。

その豹変ぶりに、というよりそのダンスの上手さに、私は唖然。

体柔らかっ!

動きキレキレッ!

女EXILEみたい!

いつだったか、竹内さんの制服の胸当てが外れてたことがあったけど、この激しい動きを見れば納得だ。

昼休みも、ダンスの練習をしてたんだね。

竹内さんのダンスに見ほれていて、向こうから黒い車がやってきたのに気づかなかった。

いかにも高級車といった様相の車だ。

運転している人は、黒いサングラスをしている。

あ、竹内さん避けないと。なんかこの車ヤバイ感じだよ?

そう思った瞬間、車は竹内さんの前で止まり後部座席のドアが開いた。