さすがの竹内さんも、少なからず驚いていた。
会うのは昇降口で言い合いになったあの時以来だから、本当は気まずいはずなんだけど。
あまりにも唐突な登場だったので、私は気まずくなるのも忘れてしまった。
「竹内さんて、私服もかっこいいね!どこで買ってるの?」
などと、どうでもいいことを口走ってしまった。
私がテンパッているうちに、竹内さんが通常運転に戻る。
いつもの無表情に戻ったけれど、なんだかそわそわしていて落ち着かない。
「・・・通販」
いや、竹内さんも多少テンパッてるみたいだ。
「森永は、東京に何しに?」
竹内さんが、そう聞いてきた。
竹内さんとこうして普通に会話してるのが、なんだか不思議な気分だ。
怖いと思ってたはずなのに。
昇降口で、ケンカ別れしたはずなのに。
私がそんな気分に浸りながら東京にいる理由を話すと、竹内さんはなぜか黙り込んでしまった。
何かをとまどっているような表情。
そんな竹内さんを見るのは初めてで、ちょっと驚いた。
けれど私は、次に竹内さんが放った一言に、もっと驚くことになる。
「森永、あの・・・今晩、泊めてもらえないかな」