・・・なんで?なんでこんなに歩いてるのに、着かないの?
私は真夏の大都会で、早速迷子になっていた。
スーツケースを引いて歩く私は、完全におのぼりさんだ。
しかし、田舎者ということがばれると悪い人に目をつけられる怖れがあるので、絶対にキョロキョロとかオドオドしてはならない。
まぁ、実際に東京で悪い人につかまって恐ろしい目にあったことはないけど。
私の中の東京のイメージは、テレビで時々やってる「警察密着24時」みたいな番組に出てくる、顔にモザイクかかった人たちがウジャウジャいるというイメージだ。
私は、「迷ってなんか全然ない東京っ子」を装い、ものすごい勢いで歩く。
本当は、めちゃめちゃ迷っている。
東京スカイツリー駅で降りたはずなのに、肝心のスカイツリーが全く見えないのだ。
でも、立ち止まって地図を見たりしたら、悪い人に目をつけられちゃう!
無意味に路地に入ったり出たりを繰り返した。
スカイツリー、どこよう!
このままじゃ、何もしないうちに日が暮れる。
途方に暮れた私は、通りの商店の前に出ていた、人の良さそうなおじさんにとうとう道を聞くことにした。
この人は、悪い人じゃなさそうだ。
「すみません、スカイツリーってどこですか?」
おじさんはきょとんとした。
「どっちから来たの?」
「スカイツリー駅で降りたんですけど」
おじさんの目が、丸くなった。
「今来た道を、戻ると・・・」
おじさんが指をさしたのにつられて、私が後ろを振り向くと・・・
「あ」
スカイツリーがあった。
「スカイツリー駅は、スカイツリーとつながってるんだよ」
イヤーン!!私の時間と体力、返して!!