「・・・わたしは、みんなと仲良く楽しく過ごしたい、からさ」

なんとかそう答えたけれど、竹内さんは納得しない。

「結局、逃げてるだけじゃない。目の前の現実を見ようとしないで、楽しい妄想に置き換えてるだけ」

・・・竹内さん、そういう風に思ってたのか。

ちょっと、いやかなりショックだった。

竹内さんはこないだ私を助けてくれたし(本人はそう思ってないかもしれないけど)、積極的にかばってくれるようなことはないけど、なんとなく私の味方でいてくれているような気がしていたから。

竹内さんがじっと私を見つめているので、私には逃げ場がない。

逃げ場を失った思いが胸の中で爆発し、言葉にならないうちに喉元を一気に駆け上った。

「だって・・・!じゃ、他にどうすればいいっていうわけ?!」

わー!竹内さんになんて事を言ってるんだ、私?

心の片隅に追いやられた理性が騒いでいるけれど、一度堰を切ってあふれたものは洪水のように、もうとどまるところを知らない。

「目の前の現実が変わらないんなら、見方を変えるしかないじゃない!どんなに嫌なことがあったって、人は、心の中でなら空だって飛べるんだから!」

「それは楽な方法かもしれない。でもそれじゃ、いつまでたっても実は同じ場所にいるだけ。富士山なんか、登れないよ」

ガヤガヤと、みんなが階段を下りてくる音がした。

私は慌てて、昇降口を飛び出した。