竹内さんだった。

竹内さんは、一言発したきり、しばらく黙って私を見ている。

何か話したいことがあるのに、うまい言葉が出てこないような。そんな複雑な表情をしていた。

何?私、歯に青のりでもついてるのかな?

沈黙にたえられなくなって私が先に口を開く。

「竹内さんは、海行かないの?」

「行かない。そんなことは、どうでもいい」

覚悟を決めたように、私を見た。

竹内さんが私に話しかけてくるなんて、初めてのことだった。

「森永。なんで笑ってんの」

「…え。なんでって…」

竹内さんがどういう答えを求めているのか、分からない。

ただ分かったのは、竹内さんはただ理由を知りたいわけじゃないってことだった。

「あんた、いじめられてるんだよ?なにヘラヘラ笑ってんの?」