なんとか、その場をしのいだ。

心が、ボロボロの使い古した雑巾みたいになっている。

入学した頃は、パリッとアイロンをかけたお気に入りのハンカチみたいだったのに。

昇降口へ急いだ。

みんなはまだ、海の話に夢中だ。

今のうちに、帰りたい。

もう傷つきたくない。

外靴に履き替えようとして、身をかがめたときだった。

後ろで私を呼ぶ声がした。

「森永」