緊迫した空気が解け、みんな席に戻る。
た、助かった・・・
お礼を言いたくて竹内さんを見たけれど、竹内さんは耳にイヤホンをさして「話しかけないで」オーラを漂わせている。
竹内さんは、私を助けたかったというよりもマジでうるさかっただけみたいだ。
戻りがけ、大柄君が
「ヒメにはかなわねぇ」
ぼそっとそうつぶやいたのが聞こえた。
前から不思議に思っていたけれど、みんなは竹内さんのことを陰で「ヒメ」と呼んでいた。
下の名前は詩織だから、名前から取られたあだ名じゃないのは確かだ。
お姫様なのかな?
頭の中に一瞬、竹内さんがシンデレラみたいなドレスに身を包んで、笑みを振りまく姿を想像したけど・・・
いや、無理あるだろ・・・。
戦国大名の、末裔とか?
王子様の、許婚がいるとか?
私は一度聞いてみたいと思っていたのだけれど、いまやそんなことを聞けるような余裕はなくなってしまった。