―――別に、希望進路が無かったわけじゃない。 こうしてみたいと思う行き先はあったし、やってみたいと思う目標も、ないわけじゃなかった。 ただ、自分に勇気が無かっただけで。 「…なりたい、けど」 ぽつりと呟いたのは、自分の部屋のベッドの上。 身体を投げ出すと、なぜか口からこぼれ落ちた。 「……」 なりたいとは思う。 幼稚園教諭。なれる可能性が低いのは、わかってる。それくらい。 なりたいとは、思う。話せるほどの根拠があるわけではないけれど。