*** 二人、並んで歩く。 頭上を追い抜いていった真っ黒な烏を見て、お母さんは不安げに瞳を揺らした。 ゆらゆら、ゆらゆら。揺れている。 店を出て歩いているうちに、日暮れへと刻々と迫ってしまってるからだろう。 「…別にそんな、気にすることないと、思うけど…。夢の話なんだしさ」 不安を取り除いてあげなきゃいけない。その一心で口をついたけど、 あまり効果は得られなかった。返ってくるのは、やはり不安に濡れた声だった。 「…言ったでしょ。リアルだったって」 「でも、夢なんでしょ」