さっきまでの雨が嘘のようだ。

空は晴れ渡りさわやかな風がワタシの髪を撫でる。

ずいぶんと履き慣れたハイヒール。
専業主婦時代はスニーカーばかり。
服装もジーンズからスーツに変わりお化粧もばっちり
するようになった。

この仕事はきついけれど、女としてまた輝ける気がした。


一通りの顧客訪問が終わりカフェで一服。

カップルがなにやら揉めている。
彼女が泣き出した。

そんな光景もワタシにはほほえましい。
必死でなだめる彼。

いいな、若いって・・・

またこんなことを思ってしまう。


結婚して専業主婦をしていた頃、ただ夫の帰りを待つだけの自分。
子どもが生まれ、家事に育児、なりふりかまわず過ごしていた自分。

夫の浮気にも気づかず。
毎日が一生懸命だった。
いや、必死だった。

女を忘れたワタシ。

でもそうさせたのは夫だ。

浮気をし、家庭をかえりみない夫が憎かった。

でも今は違う。

きっとまた素敵な人が現れる。
ワタシのことも勿論、息子のことも包んでくれる
素敵な男性が現れると信じ今の生活をがんばろう。

そんな決心をしたっけな・・・

そろそろ会社に戻る時間だ。

慌てて席を立ちレジへ向かう。

『唯??』

振り返ると・・・
そこには高校の頃大好きだった彼がいた。