全てはここから。

君とうちの物語は
少しずつそろそろと
幕を開ける。
"好き"という気持ちが
君へと向かっている
のは
凄く当然の成り行き。

だけどそれは
兄弟愛に近い親愛の域
憧れのものだった。

遊んで貰えて嬉しいな
飼って貰えたら
幸せなんだろうな。
なんて
野良猫が優しい飼い主
に望む気持ち。

恋愛の"好き"とは
まだ似つかない。
小さな"好き"だった。
君に対する"好き"が
親愛から恋愛感情に
変わった。
ただ普通に接して
貰えて
少し優しくして
貰えるだけで

こんなに嬉しくて
こんなに幸せな
気持ちになれる。

君に大切にして
貰えたら
…愛して貰えたら
君の家は二階建てで
親と3人で住んでいる

"ねぇ?
本当に上がっていいの"
"いいよ。どうぞ
綺麗じゃないけど…"

そう言って通された
のは
狭くて、でも
整理整頓された
小綺麗な部屋だった。
君がうちの肩に手を
かけて
少し引き離して
(あっ。目が合った。)
そう思った瞬間。
君の唇が降って来た。

それは優しかったよな
乱暴だったよな
甘いような
酸っぱいよな

不思議な味と感覚。
君の触れただけの
優しいキスに
何だか心までほぐれた

そして思ったの。

うちのことを見つけて
くれて
救ってくれて
解ってくれるのは
きっと君しかいない。
だけどうちは自分を
止めることが
出来なかった。

その人のなにもかも
(例えば笑顔や気持ち
頭のてっぺんから
足の先までなにもかも
過去も未来も全て)を
こんなに欲しいと
思ったことはない。