「私は特にお気に入りはありませんの。どの花も素敵で。特別なんて、選べませんもの」



(というより、専らガーデンパーティーの傍ら本を好んで読んだり、語学が堪能な方と話してばかりだもの。まさに花より団子な人間なのよね)



ふふ、と内心でファイナは自嘲した。



「そうですか。では、お気に入りの花が決まりましたら、是非僕に教えてください。その花をファイナ様に贈らせていただきます」


「…まあ、嬉しいですわ」



そんな日は一生来ないだろう、という本音をなんとか心の奥底で押し殺し、ファイナは作り笑顔で答えた。






それからネビルと少し話してから別れ、間もなく夕飯の時間となった。


窮屈な思いをしつつも、令嬢らしくなんとか振る舞う。

ものの、疲労は半端ない。




苦難を乗り越えて部屋に戻れば、ルノーで笑顔で主を迎える。



「ファイナ様、ハリー様、シン様からお誘いがきています。遊戯室で是非、ご歓談したいと」

「……へぇそう」

「ええ、そうです。さあ、早速いってらっしゃいませ」

「……」



ファイナは恨みがましい目つきでルノーを見つめる。



「……ファイナ様?」

「わ、わかってるわよ。行きます、行きますとも」



しかし、メイドの黒いオーラに負け、しぶしぶ遊戯室へと足を向けた。