縋るように、隼人に口をつく。
「…っ、…もし、好きだって言ったら、迷惑?」
…震える唇で、そう尋ねた。隼人の表情は、肩に埋もれてしまって見えない。
「…迷惑な訳、ない」
吐息がかかる。
涙が落ちた。
「…隼人、」
「好きだ」
「うん、…ごめん、ごめんね。ありがとう」
自分の顔は見せられなかった。肩に埋もれた隼人の顔。自分の顔も、見られてない。
本音を吐き出した。
隼人は、どんな表情をしているだろう。
「…っ好きだよ隼人、」
不安定な感情を、ただひたすらに持て余す。
曖昧に濁った二人の過去に、早く背を向けたくなる。
「隼人、…ありがとう」
「…なにが?」
「…私のところに、来てくれて」
自分たち二人に出来た傷痕を、癒えるものが見つからなかった。
傷痕は深くなる一方で、やっと見つけた、傷痕を唯一癒えるもの。
「…好き、だよ」
それは、
涙が零れ落ちるよう な雨のある日、二人 を包む、
愛の唄だった。
【完】
はじめまして。
未歩*です。
『空回りな僕等』完結しました。
この物語はタイトルにも入っているように、『空回り』をテーマに執筆したものです。
空回りを繰り返す不器用な二人を描いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
ここですこし、登場した二人をあらためて振り返ってみようと思います。
まず、この物語の主人公である友梨について。
彼女はとても不器用で、素直に気持ちを伝えられない性格です。
思ったことを素直に言えないのは本人も自覚していて、自分の悪い癖だと感じています。
あとはとにかく自分に自身が無い。親友に軽く馬鹿にされたときも、正直傷付いています。メンタル面では非常に弱い子なのです。
それとは裏腹に、やると決めたらとにかく実行する。そんなタイプです。
なので、気持ちを不器用ながらに伝えられた隼人には、これからどんなことでも素直に言えるような、そんな関係になって欲しいです。
次に主人公の彼氏である隼人について。
彼はとにかく言いたいことははっきりと相手に伝えるタイプ。
ここら辺が友梨とは真逆ですね。…そのとき感じたことを相手にしっかりと伝える。それが隼人です。
素直という面としては長所ですが、却って毒舌というような短所にもなってしまう部分です。
また、彼も彼で不器用なので、言いたいことを言う分、うまく気持ちを吐き出せない部分があり、
そういった面では友梨と隼人は凸凹カップルなのかもしれません。
そんな二人を描くのはとても楽しかったです。
二人には不器用ながらに仲良く、そして楽しく過ごして欲しいです。
番外編なども後々書いていきたいと思います。
最後になりますが、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
初めての完結作品なので読みづらい点も多々あったと思います。ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
また皆様と会えるときまで、執筆を頑張りたいと思います。
本当にありがとうございました。皆様が本作を読んで、すこしでも幸せになれることを願います。
未歩*
「なんか話が急過ぎるよね」
結菜が私に視線を送りながら言った。
そうですかね。いつも通り、賑やかな教室の中で私達は話していた。
「そうですかね」
「急だったよ!鈴村君、いきなり教室に入って来てさ!友梨のこと連れて行っちゃってさ!それでゴールイン?この幸せ者が!」
「私達まだ結婚はしてないよ」
「ゴールイン=結婚じゃないし。ああもう、羨ましい!」
「羨ましいんだ」
あの日、隼人と私が付き合うことになってから二週間が経った。
結構経ったと思うんだけど…。結菜が今更になってぐちぐちと言い出す始末。
「結菜だって彼氏いたじゃん」
「それは過去の話。良いなー鈴村君。ねえ、一日でいいから貸してよ鈴村君」
「レンタルじゃないよ隼人は」
「レンタル料金払うよ。はい百円」
「しかも安!」
百円で彼氏貸すってどうなの。ていうかレンタルじゃないって。
万金出されても貸す気はないけどさ。