「心が読めるって……お前、読心術でも使えるってのか?」

「お前はやめろ。読心術というのは相手の表情や微細な動きから《予想》するものなのだろう? 私は正確にお前の心を《読んで》おるのだ」

 彼女の話し方はどこか古めかしく、そしてどこか深い所に威圧感めいたものを秘めていた。

(うーむ、時代錯誤しそうだな)

「そうだな、今の時代の話し方ではないかもしれぬな」

「!!」

 どうだ? 当たっておろう、とニヤリと笑って見せる少女。今度も確かに声に出してはいない。

 桐原は正直言って、今までの人生の中でもかなりの高順位に入る驚きに撃たれていた。

 しかし、心を読めると言い、その能力を見せつけたこの少女よりも、どちらかというと……自分自身に驚愕していたのだった。

「む、なんだお主? 私より自分に驚くとは……不可解な男だのう」

 怪訝そうに桐原を見つめる少女の右目は、左目の深く吸い込まれるような漆黒の瞳とは違い、薄く透き通るエメラルドグリーンのオッドアイ。

 日本人離れした目の色だが、顔つきや絹糸のような髪の色を見る限りでは生粋の大和撫子―――他国の血は入っていないようだ。

 ならば、右目はカラーの入ったコンタクトレンズだろうか。古風という表現がしっくりくる少女の中で、あからさまにその右目だけが浮いてしまっていた。しかし当の桐原はというと、

「何で……何で普通に会話出来てぶんだ、俺!」

 思いっきり舌を噛んでいた。少女の話すら聞いていない。勿論、目なんて見ちゃいない。

「こんな距離で! しかもこんなかわいい女の子と!」

「か、かわいい!?」

 異常なまでのテンションになっている桐原は、自分が何を言っているのかも、それにより目の前の古風な少女が素っ頓狂な声を発したのにも、全く気付いていない。

「全く緊張しない! 震えも、冷や汗もジンマシンも何も出ない!!」

「面白い事を言うな、お主。だが、それよりお主は……私を化け物を見るような目で見ぬのか?」