歌声が聞こえる……細く、小さく、呟くような歌声が。

それは夜魅の知らない曲だった。


(英語の曲?)

お粥をほぼ作り終えながら、夜魅は思った。

喉が痛むのか時々霞んでは聞き取れなくなるが、彼は途切れることなくその曲を歌い続ける。


「粥が出来たぞ」

大きめの梅干しを上に載せながら、熱々のお粥を桐原の枕元に運ぶ。


「ああ、すまん」

歌を中断すると、桐原はゆっくりと上半身を起こし夜魅の方に向き直った。

よし、だいぶましになったようだなと、一人自己満足。


器に取り分けて蓮華に掬い、ふうふうと息をかけて冷まし、桐原の口元へ運ぶ。


「ほら、口を開け」

「いや、流石にそれくらい自分で……」

「うるっさーい!」

パチーン!

器を取ろうと伸ばした右手を、思いっきり平手で叩かれた。


「病人なら病人らしく、口答えするでない。ほら、あーん」

桐原はもう一度断ろうとしたが、夜魅の真剣な眼差しに気持ちが揺らいだ。

彼女が自分を心から心配してくれているのが分かったから。


結局アツアツ風景よろしく、夜魅に食べさせて頂くことにした。

あーん。


「熱っ!!」

「わわ!すまぬ!み、水、水!」