「いいから。そう思うなら早く入って上がれ」

「すまない」

 もう一度言うと少女は、また水滴の滴る着物もどきを脱ぎ始めた。勿論、こちらの事などお構いなしになのだが、不意に途中でピタリと動きを止めると、背を向けたまま呟くように桐原に言った。

「先は私もお主もああ言ったが、今一度一応の確認をしておく。……覗くなよ」

「はいはい」

「いや正確には、覗いてもよいがその場合、お主の両目、余すことなく微塵も残さず徹底的に塵と化すまで擦り潰す……と思っていてもらえれば、幸い?」

「はい!!」

(全く、覗く気なんて更々ないのも全部わかってるくせに……よく言うよ)

 かなり図々しい態度の少女だが、桐原は本来人のいい性格だし、自分が唯一普通に話せる少女に興味がある事もあり、無意識下では何となく、この突然降ってわいた状況を受け入れつつあった。

 桐原はくるりと少女に背を向けると、後ろ手に脱衣所のドアを閉めた。