「しばらく泊めろだぁ!?」

 ずぶ濡れの少女は家に上がるなり、桐原を心底からビビらせた。


 あのまま自分を頼ってきたびしゃびしゃの少女を放っておく訳にもいかず、アパートが近いこともあり、とりあえず服が乾くまでは……と連れ帰って来た。

 いや、半ば強制、結構強引、最終的に無理矢理に“連れて来させられた”訳なのだが……。


「何をそんなにあからさまに驚いておる? 良かろう一泊や二泊……ほう、二十一にもなってまだ彼女の一人すらおらんのか、童(わっぱ)」

「う……」

 童って……お前の方が明らかに年下だろう! とは思うが、グサリと痛いところを突かれて言い淀む。

 少女は目を細め、勝ち誇った笑みで桐原を見た。

 こう改めて考えると、心の中が筒抜けってのも困りもんだなと思う。

「しかも人間恐怖症で女性恐怖症、ほほぅ血も苦手か……なんとまあ、私以外にもこんな化け物がいたとはな」

(ったく、今日会ったばかりの人を化け物扱いかよ……)


 ここまでくると、どうやら本当に心を読めているらしい事は分かった。

 流石に口に出していない心の内を一言一句正確に再生(リピート)されれば、そりゃ信じるしかないだろう。

 それでもこの少女に対して全く嫌悪感が沸き起こらないっていうのは、ひょっとして俺の神経がおかしいのだろうか?