そして女性で思い出した。

(さっきの女の子はどうしたんだろう?)

 結局名前すら聞けなかったが、独特の、いや違和感といっていい程の不思議な雰囲気を身に纏った少女だった。

 鬼とか逃げてきたとか訳わかんないこと言っていたが……泊まるとことかあるのだろうか?

(はっ! もしかして、若年性ホームレス!?)

 このご時世だ、有り得ないことじゃない。そう思うと自分が酷く悪者に思えてくる。

 そしてもう一つついでに思い出したが、極道の妻。流石にあんな古めかしい話し方はしていなかった(はず)。

 それだけパニクっていたにも関わらず、話し始めればすらすらと言葉が溢れ出てきたんだから、益々不思議な体験だったと言わざるを得ない。

 そしてさらに、人間恐怖症で女性恐怖症の自分が、異性の事を心配している事に驚いていた。

 あるいは、彼女は人間ではなかったのかもしれない。もしかしたら、人を惑わし精気をすするという妖魔……まで考えて、止めた。馬鹿らしい。

 ふと顔を上げ外を見ると、灰色の空は早くも大粒の涙を流し始めていた。


 雨は誰かの悲しみの涙なのよ―――。


 桐原は、誰かが言っていたのを思い出した。