横山くんは私という存在を確認するように、強く、強く抱き締めた。
さっき、数学の授業中と同じように。
「穂香…」
真冬なのにそう囁かれた耳だけが熱い。
「俺、怖いんだ…」
今度ははっきりと“怖い”と言った。
「明日になったら、また穂香のいない世界に戻る気がして」
私のいない…?
彼は何を言っているんだろう…。
「もう、二度と会えない気がして」
二度と会えない、そう言った横山くん。
彼が冗談ではなく、真剣に言っているのが伝わり、ぞわり、と鳥肌が立つのが分かる。
慌てて冗談っぽく、私は笑いながら言う。
「…なに、馬鹿なこと言ってるの?私は明日もいるから」
「そうだよ、な。」
「当たり前じゃん」
「…名前。俺のこと、名前で呼んでくれないかな?」