“怖い”
ついさっき、彼がぽつりと洩らした言葉を思い出す。
もしかしたら、彼は本当に何かを怖れているのかもしれない…。
そんな漠然たる考え浮かぶ。
ふと彼の手元を見ると微かに震えているのが分かる。
何をそんなに怖がっているの?
「穂香…」
「ん?」
目があった。
子供のように澄んだ、きらきらとした瞳。
それが今、不安げに私を求めている。
そんな、ああ、もう。
言葉に出来ない感情が溢れていく。
それが愛しいという感情だと、私はまだ知らない。
「…手、握ってもいい?」
断れない。
私には、断れない。
「うん…、きゃっ!」
私が頷く。
それと同時に横山くんは手を握るどころか私の手を引っ張り、彼によって私の体は抱きすくめられた。