ノックをしたら、中から声が聞こえた。

「彩?

 いいよ、入って。」


祐の、透き通った、優しい声。


「ウン。」


ガラガラ・・・


開けたら、風が私の頬を撫でた。

祐は・・・窓を開けてた。

だから風が、私にも当たった。


「彩、久しぶり。」

祐が声をかけてきて、我に返った。

「あ、ウン。久しぶり。

 ねぇ、検査・・・どうだった?」

答えは解っているけど。

でも、期待している自分が、まだ居る。

「彩・・・分かってるくせに。

 駄目だよ。


 まぁ・・・腫瘍(しゅよう)は広がってはないけど。」

「広がってないだけでも・・・奇跡じゃない。」

「まぁね。

 で、彩の方は?修学旅行、どうだった?」

そう、私はこの前まで修学旅行。

祐は検査。

で、会う時間が全然なかった。


・・・だから、「久しぶり」。