けれどクラリス嬢は全く引く様子はなく、その上、グレイに妖艶な笑みを向けた。
「姫君を守る騎士のつもり?いつまで続くのかしらね」
その言葉には余裕がありありと浮かんでいて、まるで『必ず私のものにしてみせる』という宣戦布告のようだった。
と、するりとクラリス嬢は私に身を寄せ、私にだけ聞こえるように囁いた。
「――ぜひ二人だけでお話をしたいわ。それに――あなたの大切なものも、預かっているし」
大切なもの――?
クラリス嬢は唇の端を吊り上げ、にっこりと微笑んでいた。
今私の手元にない、大切なもの。
その意味が分かって、私はさっと青ざめた。
大切な、髪飾り。
グレイにもらった、花の髪飾り!
どうして、クラリス嬢が?