けれども、わたしはすぐにまた、憂鬱な気分になった。

リリーの後ろからこちらに歩み寄ってきた人物が、クラリス嬢だったから。

何をされても動じてやるものか、と身構えたけれど、彼女はまるで何事もなかったかのように、その上親しげな顔で!わたしを見た。

「まぁ、ノアさん。とても素敵なドレスですわね」
「……どうもありがとうございます」

くすくすと笑みをこぼすクラリス嬢は、深紅のドレスに身を包み、艶やかに微笑む。
周りの男性客から感嘆の声が漏れるのも納得できた。

そんななか、グレイだけはクラリス嬢を睨みつけながら、わたしのそばを離れようとしない。