こちらもまた、普段とは雰囲気の違う格好がとても似合っている。
機嫌がいいのか笑みを浮かべワインをあおるその姿に、周囲の女性からひそひそと憧れと好意の混ざった声があがる。

……好いてくれる女性がいるのだから、その人たちのところへ行けばいいのに。

そんなわたしの心の声をよそに、伯爵はわたしのドレス姿を見下ろし、笑った。

「は、なかなかさまになってるな。」

ちょっとむっとしたけれど、ここで噛みついては逆効果だと思い、つんとそっぽを向く。
それを見てまた伯爵はニヤニヤしたあとに、「まあ楽しめ。私はやらなければならないことがあるからな」と、去って行った。主催者だから、きっと挨拶やなにかがあるのだろう。


と、そこへ、知り合ったばかりの少女の声が聞こえた。


「ノア様っ」
「リリー!」

わたしがあげた、ふわふわのドレスに身を包んだリリーが、わたしに手を振り、こちらに駆け寄ってくる。


「今日は本当にありがとうございます。おかげでいつもより舞踏会が楽しめそうです」

心の底から嬉しそうなリリーに、喜んでもらえてよかったと笑みを返す。