「ほ、本当にいいんですか!?」
「もちろん。どうせわたし一人じゃ着られないし、きっとリリーさんに似合うわ」
「わあ…! ありがとうございます!! あ、あたしのことは、リリーって呼び捨てで呼んでくださいっ」

ぎゅっとわたしの手を握り、満面の笑顔で何度もお礼を言う。やっぱりリリーさんはいい人だ。
心の底から嬉しそうな笑顔で、これも可愛い、あれも可愛いと、ドレスを選ぶ。

やがて、フリルのたくさんついた、裾の短いピンク色のドレスを選び抜くと、何度も頭を下げ、嬉しそうに衣装室を出て行った。

「本当にありがとうございました!」
「いいえ。それでは、良い舞踏会を」
「はい!」

スキップでもしそうな勢いで廊下を駆けていくのを見送る。

すると、グレイがくるりとこちらを振り向き、どこか緊張した面持ちで口を開いた。

「あの」
「なに?」
「……さっきの方も言っていたように、今回の舞踏会は、使用人も参加します」
「……?ええ、そうみたいね」
「ですから……私と一緒に、踊って頂けますか?」

一瞬、リリーのことが頭をよぎった。

彼女は、わたしとグレイの関係を知らない。でも……。

気がつくとわたしは、上流階級のレディがそうするように、笑ってうなずいていた。


「わたしで、よろしければ」