そして、気づいた。


このドレスは、グレイの色なのだ。


綺麗な水色の瞳に、執事服と髪の毛の黒。
どう見ても、グレイの隣を歩くことを意識したとしか思えない。


完全に無意識だった。……恥ずかしい。

グレイと二人して俯いていると、何も気づかないリリーさんは、グレイのことを気にしつつも、残った大量のドレスを見比べていた。

そして羨ましそうな目で、ドレスに縫い付けられた宝石に触れる。

「いいなあ……実はあたし達使用人も、今日は仕事を休んで、一般客として舞踏会に参加するんです。でもドレスは自分で調達しなくちゃならなくて……」
「そうなの?」
「はい。でも、あたしお給料もすぐ使っちゃうから、あんまり良いドレス持ってないんです」

残念そうな顔のリリーさんに、わたしは思わず申し出てしまった。

「ねえ、ここにあるドレスでよかったら、好きなのを持って行っていいわよ」
「えっ!?」

驚きと喜びに目を丸くするリリーさんに、わたしはグレイに一応確認を取る。

「いいわよね?グレイ」
「はい、この部屋のドレスは全て、ノアさんのものですから。」

その瞬間、ぱっとリリーさんの顔が明るくなった。