そんなわたしの気も知らず、メイドさんは続ける。


「グレイさんって、とっても綺麗ですし、礼儀正しくて……っ、でも、あたし、グレイさんの笑った顔を見たことがないんです」

少しさみしそうに笑うメイドさん。
やっぱり、グレイは笑わないんだ…。わたしの前でなければ。

「それに、そもそもあたし、グレイさんとの会話も全然したことなくて……片思い、なんです」

メイドさんは、初々しい少女の笑みを浮かべた。
可愛いメイドさんだ。相手がグレイじゃなかったら、きっとわたしも素直に応援できたと思う。
けれど、グレイは、わたしの……。

また、もやもやする。

「…ねえ、あなたの名前、なんて言うの?」

話題をそらそうと今更なことを尋ねると、メイドさんは慌てた。

「あっ、すみません!あたしは、リリーって言います。クラリス様のお手伝いをさせていただいてるんです」

その言葉を聞いて、わたしは目を見開いた。

「えっ……クラリスさんの?」