「あの……お邪魔でしたでしょうか?」
ため息を吐いたわたしを見て、メイドさんがちらちらと上目づかいに尋ねる。どうやら、わたしとグレイの邪魔をしてしまったと思ったらしい。
「ううん、大丈夫よ。気にしないで」
すると、ほっと安心したように息をつくメイドさん。
よく見るとその頬は、薔薇色に染まっていた。
そして、グレイの消えた扉を見て、小さくつぶやく。
「……グレイさんって、素敵ですよね」
その言葉にどきりとした。
「え…」
驚いて声を上げると、「あ、いえ、ええと」と慌てたメイドさんは、真っ赤な顔でうつむいて、エプロンをいじりながらぽそぽそと話し始めた。
「その……実は、あたし……グレイさんのことが、その…憧れと言いますか」
「…好き、なの?」
思わず口に出してしまい、しまったと思ったが、メイドさんは頬を染めたまま小さく、
「……はい」
と頷いた。
どうやら、わたしとグレイの仲を知らないらしい。
知られていても気まずいけど、なんとなく申し訳ない気分と…そして、もやもやした感情が渦巻いている。