もしそうなら、わたしはすぐにでも血をあげるつもりだ。第一、伯爵にはもうすでに、何度も血を飲まれている。それなのに、大好きなグレイにあげない理由はどこにもない。

けれど……。


何故か、自分からグレイに血をあげるという行為は、とてつもなく恐ろしいことのような気がした。

何故かはわからない。ただ、怖い。


例えると、するならば……それは、恋人との初めての性行為を恐れる感情と似ているような気がした。

もちろん、全く違うことはわかっているし、伯爵にだって体を許したことはない。
もちろん、嫁入り前の娘だ。経験だって一度もないけれど……。

けれど、この、愛する人のためにしてあげたい、けれど怖い……という矛盾した気持ちを、わたしは抱えていた。


グレイに聞こうにも、何となく聞きづらい。

ただ、ぼんやり髪飾りを見てそんなことを考えていると、グレイに声をかけられた。


「……どうかしましたか?」