けれど、伯爵は、いつものようにすぐに血を飲んだりはしなかった。

代わりに、わたしを見下ろしたまま、話し始める。
そこに、不機嫌そうな様子はない。むしろ楽しそうな顔をしていた。


「お前、グレイと交際しているだろう」


一瞬、わたしは焦った。

どうしよう、ばれている。
知られたら不味いことだっただろうか。もちろん自分たちからばらすつもりはなかったし、黙っているつもりだった。けれど、知られているならどうしたらいいんだろう。
否定した方がいい?
グレイの仕事に関わる?

そんな思いが顔に出たのか、伯爵は言った。


「別に隠さなくてもいい。餌と下僕が何をしていようと、私には関係がないからな」