それを見たクラリス嬢は、にやりと唇を歪め、高らかに告げる。

「気に入ったわ!名前は……グレイ?綺麗な顔をしているし、奴隷といっても、良い待遇で迎えてあげる。使用人ごときが私の奴隷になれるなんて光栄でしょう?」
グレイは答えない。ぎゅ、としがみつく手に力を込める。

「あなたも、こんな女より、私に仕えたいでしょう?」

その瞬間、わたしの頭が真っ白になった。

ーーもし、グレイがいなくなったら。

嫌、嫌だ、そんなのーー。

「嫌……っ!!」

わたしは無我夢中でグレイにしがみついくと、震える唇で叫んだ。

「グレイ、お願い……行かないでっ!!」

驚きに目を見開いたグレイが、わたしを見下ろしていた。